こんにちは。富山県高岡市で仏像や仏具、美術工芸品の製造、卸売業を営んでいる本保です。私たちは、職人技が息づく伝統的な仏具から、現代の住まいになじみやすい手元供養の道具まで、種類豊富な商品を全国の皆さまにお届けしています。
このサイトでは、いくつもの時代を経て形を変えながらも、私たちの暮らしの身近にある仏像や仏具について、わかりやすくご説明します。
「具足」は仏教で、仏壇に供える仏具一式のことです。とりわけ基本となる香炉、花立、火立を「三具足(みつぐそく、さんぐそく)」と呼びます。
具足という言葉はもともと、武士の武具、甲冑(かっちゅう)の別称で、頭から足までを守る装備が「そなえ足りる、十分に備わっている」という言葉の意味に由来している、とも言われています。仏教においての具足は、仏様や故人を供養するために必要な道具であり、それらが過不足なく備わるといった意味合いが含まれています。
具足は故人を偲び、弔っていくためにも、意味や配置について理解しておくことは大切です。こちらでは、仏壇に供える具足を選ぶ際のポイントや、近年の家具調仏壇に合う具足も紹介していきます。
1.具足ってなに?
仏壇には、さまざまな仏具が飾られています。その中でも仏様やご先祖様、故人を供養するために必要な仏具を総称して「具足」と言います。
1-1.具足とはどのような仏具?
具足とは、特定の仏具のことではなく、仏具一式を指します。その中で基本とされているのが線香を焚く「香炉」、花を生ける「花立」、ろうそくを灯す「火立」を合わせた「三具足」です。
仏教が伝来した頃から、仏様の前で焼香し、花を供え、その場を明るく照らすということが行われてきました。三具足は宗派に関係なく、最初に揃えるべき仏具とされています。数が増えると四具足、五具足、さらに六具足や十一具足を供える場合もあります。その中でも、三具足に花立と火立を1つずつ加えた「五具足」が仏壇を飾る正式な形式とされ、法要などで並べられます。
近年の家具調仏壇では、三具足に茶湯器、線香差などを加えた六具足のセットが一般的によく使われます。
1-2.三具足とは
三具足は香炉、花立、火立の3つを指しています。「仏の三大供養」と呼ばれており、どの宗派でも基本とされています。亡くなった直後に用意される枕元の祭壇にも置かれます。
向かって正面中央に香炉、左に花立、右に火立を配置します。
1-3.五具足とは
五具足は香炉1・花立2・火立2の形式です。中心に香炉を供えて、両脇に火立を一対、火立の両外側に花立を一対配置するのが一般的です。
1-4.具足の置き場所は?
具足の配置には決まりがあります。三本足の香炉や火立は一本足が正面に向くように配置しましょう。
仏様の正面中央に香炉を置き、その近くに花立と火立を供えるしきたりは、インドからの仏教伝来に始まり、現在まで受け継がれてきたものと言われています。
三具足、五具足は一般的に仏壇の前机(前卓)に供えますが、仏壇の大きさによっては、経机(きょうづくえ)に三具足を置いて整える場合もあります。
具足の組み合わせや配置は、宗派や地域によっても異なることがありますので、菩提寺などに確認してみるといいでしょう。
2.花立、香炉、火立の意味と役割
ここからは、香炉、花立、火立の意味や役割について詳しく解説していきます。
2-1.香炉
仏教ではお香を焚くことにより、自分自身や周囲を良い香りで清めて、安らかな気持ちでお参りするという意味合いがあります。また、故人は香りを食べるという考え方(香食・こうじき)から、線香の煙は仏様や故人が召し上がる大切なものとも言われています。
2-2.花立
花を生ける花立は、華瓶(けびょう)とも呼ばれます。太古より「亡き人に花を手向ける」という考え方がありますが、仏壇に花を供えるようになったのは、お釈迦様が前世で修業中に仏様に会った際、花を供えた出来事に由来すると言われています。
花は仏様の慈愛を表すとされ、仏花を供えることは故人を想う気持ちを花で表すという意味があります。また辛い環境でも耐えて花を咲かせる姿から、仏様を敬い、修行の誓いを立てるという意味もあるそうです。
2-3.火立
火立は蝋燭の火を灯すための仏具で、蝋燭立や灯立、燭台(しょくだい)とも呼ばれます。お供えをした蝋燭の火は灯明と言います。灯明は、火の灯りが闇を照らすことから、知恵や慈悲をもたらすものとされています。
3.自分に合った具足の選び方
具足を選ぶときのポイントは、大きく分けて2つあります。
3-1.仏壇や家具との相性
仏具は仏壇の大きさに合わせるのが一般的です。仏壇をお持ちの場合は内寸や膳引きのサイズを事前に確かめておくといいでしょう。
リビングの棚の上などに配置する場合には、置くスペースによって選ぶ大きさが変わってきます。モダンでシンプルなデザインの具足が増えており、現代の住まいにも合わせやすくなっています。
3-2.使い勝手
毎日使うものなので、やはり使い勝手が良いことも大切なポイントです。置く場所にもよりますが、あまりに小さすぎると、灰がこぼれやすい、生けられる花が限られてしまうといったことも。長く愛用していくためには、お手入れしやすく、修理可能な国内製品がおすすめです。
4.具足のおすすめ商品
家具調仏壇の普及とともに、旧来にとらわれない多様なデザイン、素材を取り入れた具足が増えています。その中からおすすめの4シリーズを紹介します。
4-1.ひびき
なだらかな曲線と金のラインが美しい真鍮製の仏具セットです。モダン仏壇や現代の居住空間にも合わせやすい、落ち着いた渋みのあるカラーバリエーションが特徴です。
仕様:花立、火立、前香炉、仏器、茶湯器、線香差
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4-2.kasanari
「命の積み重なり」を表す輪の意匠と、職人の手作業によって生み出された表情豊かな質感が印象的な仏具セット。繊細な輝きとシンプルなフォルムはどの仏壇にも調和します。
仕様:花立、火立、前香炉、仏器、茶湯器、線香差
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4-3.きざし
上向きと下向きにカットを施し、縁の磨き加工がアクセントに。シンプルでスタイリッシュなシリーズは、置く場所と光の取り込み方によって多彩な表情を見せてくれます。
仕様:花立、火立、前香炉、仏器、茶湯器、線香差
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4-4.ゆうがを
なめらな曲線と美しい色合い、安定感のあるフォルム。実用性とデザイン性を兼ね備えたロングセラーの真鍮製仏具です。花立と前香炉は大きさを3種類から選べます。
仕様:花立、前香炉、茶湯器、仏飯器、灯立、線香差
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5.まとめ
今回は、仏壇にお供えする「具足」の意味や配置について解説するとともに、具足を選ぶ際のポイント、おすすめの商品を紹介しました。
具足は法事、法要でも使用しますので、基本の三具足である香炉、花立、火立の配置は覚えておくと役立つはずです。
仏教には数多くの宗派があり、具足も宗派によって使い分けがなされています。大切な故人を供養するための道具なので、正しく揃えて配置したいですね。具足について詳しく知りたい時には、仏壇仏具の専門店のスタッフの方に、宗派を踏まえた上でのアドバイスをいただくといいでしょう。